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生物の多様な形態を生み出す至近要因とは?

生物の多様な形態は古今東西問わず、多くの研究者の興味を惹いてきました。
僕は形態の多様性の至近要因(発生メカニズム)を明らかにし、それが進化の過程でどのように変化することで今日見られる生物の多様性が生じたのかを理解することを大目標としています。


- 形態の多様性≒体サイズと部位サイズ比率の多様性 -

動物の多くの分類群内、特に綱~目レベル内、では共通のボディプラン(基本的な体の設計)を持っています。
良い例である昆虫を例に挙げますと、頭・胸・腹・3対の脚・2対の翅・1対の触角・・・・と基本パーツは同じですが、全体の形態は多様性に満ち溢れています。
この多様性の多くは、「各パーツ(部位)のサイズと形状の変化」により説明が可能であり、「形態の多様性」とは「体サイズと部位サイズの比率の多様性」と言い換えても過言ではありません。
そのため、部位サイズ制御機構の解明は生物の形態の多様性の理解に必須の課題であると言えます。
部位サイズ制御機構の研究は、ショウジョウバエに代表されるモデル昆虫が用いられ多くの研究が行われて来ました。
その結果、部位サイズ制御には、個体の栄養状態やホルモン動態、局所的な形態形成などの様々なメカニズムが関与することが明らかになりつつあります。


- 可塑性と性的二型-

しかし、自然界には同一種内であっても特定の部位サイズに著しいバリエーションが見られる例が数多く知られています。
代表的な例が、環境条件に応答して形態が可塑的に変化する表現型可塑性と、雌雄間で大きく異なる表現型を示す性的二型です。
これらの、同種の個体間で部位サイズの違いをもたらす発生制御機構に関する研究は進んでいません。これは多くのモデル昆虫は表現型可塑性に乏しく、また性的二型も小さいので、これらの現象の解析には不適であったためと考えられます。
こういったモデル生物には見られない部位サイズ制御機構を研究することにより、モデル生物では見落とされていたり過小評価されていたメカニズムの発見など、新たな知見が得られるのではないかと期待しています。


- 可塑性と性的二型の両方の解析に適したクワガタムシ -

そこで僕は、顕著に発達した大顎を持つことで知られるクワガタムシ(以下クワガタ)に注目し、①表現型可塑性によりオス間の多型を生み出すメカニズム、②性的二型を生み出すメカニズム の2つの異なる大顎サイズ制御機構の解明を目指し、生理学的・遺伝学的・分子発生学的研究を行っています。
材料にはラボでの維持・繁殖が容易で世代時間が短いメタリフェルホソアカクワガタ Cyclommatus metallifer を用いています。
最後にクワガタを用いている理由として、「どうやってこんな形態が作られているのだろうか?」という素朴な疑問が根源にあることを付け加えておきます。



 

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